アメリカのデパートは消費者が強い
アメリカには、いくつものデパートが販売競合しています。そのデパートは、経営者主導か消費者主導かというと、完全な消費者主導なのです。
すなわち、お客さん主導なのです。
私は以前、ニューヨーク・Manhattanの老舗デパート、Saks・Fifth・Avenue (サックス・フィフス・アヴェニュー)に勤めていました。
あるクリスマスシーズンの冬、アメリカではギフトを買うお客さんで賑わっていました。
クリスマス商戦と言われるこの時期は、11月末からクリスマスまで年間でも一番消費の大きい時期になります。
ある日のこと、一人の男性が店に訪れました。
その男性は商品を返品したいとのことでした。
商品を確認したところ、カルバンクラインの男性用下着でした。
ところが、その商品はどう見ても明らかに長い間履いた様子でゴムは伸びていて、全体的によれよれでした。
さらには、黄色と茶色のシミまでついているではありませんか!
この1年間履き古したような下着を返金して良いものかどうか判断がつかず、マネージャーに確認しました。
するとマネージャーは、迷わず「返金してください」と言うので返金しました。
私は内心大きな驚きを隠しきれませんでした。
なぜ履き古した下着を返金するのかというと、マネージャーは
「ああいう客は、たちが悪いので、返金を断ると後で何をするかわからない。気分は悪いが返金した方が得策」だと言いました。
確かに下手な因縁を付けられて訴えられるよりはましかなと思ったのと同時に、返品・返金を徹底しているアメリカのデパートはすごいなと感心しました。
消費者が力を持ち、消費者主導なアパレル販売業界の実態を垣間見た気がしました。